案件づくりは「具体化」と「B・A・N・T + DC(バント・ディーシー)」
前回の【営業①】でまとめた、営業プロセスとよくある悩みの案件づくりから本記事は始めていきたいと思います。(そもそもどうやって機会を作ったり武器を作るかお悩みの方は【営業①】をご覧ください)
自分が営業していくうえでの「武器」がようやくできて、勉強会やセミナーも好調、自分自身のインサイト(示唆)も研ぎ澄まされてきていろんな人にお会いできるようになった。
しかし、それでもなかなか案件としてはまとまらない。
そんなことありませんか?正直私はありました。
一発目のウケはすごく良いけどそこからリードにつながらないので、一発屋ならぬ「初報マン」なんて揶揄されていました。
そこで、そもそもなんで、案件にならないのか?という考察と、そこからどのような順番でどのように相手と会話していくべきなのかを解説していきます。
案件にならない要因は相手と自分双方に存在する
案件にならない理由は、次の通り相手方・自分自身双方に問題があり、それを理解したうえで紐解いていかないとラッキーパンチが当たらない限り、案件にはなりえない。
相手要因
そもそも、話は聞いてくれているがやりたいという想いが無かったり、必要性がないと動かない
意思決定者ではなかったり、お金が無かったり、そもそも実はもう他で始めてたりすると、こちらが提示するコンテンツは良くても当然案件にはつながらない。
自分要因
じゃあ、相手方の要因がすべて解消されたからOKというとそうではなく、こちら側が用意するもののクオリティも高くないといけない。他社との差別化もあるがその前に、よくあるのが、「概念・抽象的」には賛同してもらえるけど、「で、どうやるの?本当にできるの?」に答えられない。
やることが前提となってしまっており、その先の成果を定義できてなく、相手の真の背景・目的を捉え切れていない場合が多い。
こういった、要因を排除すべく「B・A・N・T+DC」を1つ1つ解消していくのに加えて、提案に実現性を加えていくことが大事なのである。それぞれの意味は以下の通り。
B:Budget(予算の有無)
A:Approval(決裁者の特定とプロセスの確認)
N:Needs(必要性の確認)
T:Timing(実施すべき時期)
D:Difference(競合との差別化)
C:Concrete(具体性)
では、これらを順番に詰めていけばよいかというと異なる。(いきなり、あなたお金持ってますか?って聞いてくる営業はいないはず。そんな営業されたら自分だったらムッとします)
そこで、この「B・A・N・T+DC」を用いた、やり方を解説していく。
後にも先にもまずは「ニーズ喚起」から始めなさい:Needs
自分が営業を受ける立場だったら、全く必要のないものについて延々と語られたらどう思いますか?
絶対いやですよね。
従って、まずはNeedsがあるのかどうか?ないのであれば、Needsを喚起することが必要となる。よく勘違いするのは、ニーズありますか?と聞いて、「無いです」と言われたら引き下がる人が多い。ここで引き下がるのではなく、「え?本当ですか?実は〇〇なので絶対必要ですよ?」と仕掛けて下さい。
クライアントもすべて明確に決まっているわけでは無いので、ニーズが今あるかどうか?の確認だけでなく、本当は必要じゃないか?という喚起をして奥に埋まっているニーズを認識させることが重要。
Needsの喚起の仕方は相手の状況に応じて異なるが主なやり方は以下の通り。
民間企業の場合
3C(Consumer/Company/Competitior)の状況を抑えてなぜやるべきかをホラーストーリー(やらないと負ける)もしくは、ハッピーストーリー(やると課題が解決するor売上あがるなど)どちらかで語る
例えば、中計でこんなこと言っているけど市場はこういう状況ですよね?他方で競合はこうなっててエンドユーザーはそっち向きです。手を打たないとだめじゃないですか?というような言い方。
行政の場合
地域動向や地域のリアルな声と行政の政策の振り返りからストーリーを構築していく
例えば、昨年度来街者が非常に増えておりイベントの施策とかは大成功だった。しかし、外国人向けの対応やオーバーツーリズムが目立ち商店街が困ってましたので××が必要じゃないか?というような言い方。
~コラム~
この必要性の喚起は無料なので私はガンガンやるべきと考えている。特に、フェーズ1が終わって、フェーズ2をやることが確実な場合でも、むしろちょっと違う角度から球を投げてみる。
「Ph2はもちろんやるんですけど、そもそもの目的から考えたら実は××についてもやるべきではないか?」
実はこれを言うということがみんななかなかできず目の前のPh2を必死に取りに行ってしまう。
ケースバイケースではあるが、違う角度から球を投げることで、Ph2と新しい球双方で案件にすることができたり、新しい球はNGでも結果改めてPh2をやる意義が再確認できたりする。
ニーズ喚起のあとはタイミング合わせ:Timing
「あ~確かに必要だ!・・・・いつかはね。」
こうなってしまっては、いくらニーズが合っても案件化には近づけない。
なぜ今やるべきなのか? 今始めることが可能なのか?ということをしっかりすり合わせないといけない。
なぜ今やるべきなのか?≒緊急性・機会損失で訴求
今やるべき理由を、遅れるリスク(他社動向)、明確なマイルストン(補助金タイミングやすぐに結果が出ない類はステップ論)、今始めないと失うであろう利益(今やると次に100万円上がるけどそれがなくなるよ)このような考え方をフレームにしてなぜ今やるかをしっかりと握る
今始めることが可能なのか?≒予算執行タイミングをすり合わせ
次に大事なのがいつから予算執行できるのか?をしっかり合わせること、その手続き面を合わせないとやることはやるけど、予想より数か月ずれて、リソースがなくなっちゃうとかもある
~コラム~
実はこの必要性となぜ今やるか?というのは、我々がクライアントに対して説得するのに使いますがクライアントの担当者も社内で上席を説得したり、決裁を取得する上で必要なので大枠こちらのロジックで担当者がOkそうなら、一緒に決裁をクリアするというポジションに立ってあげるとうまくいくことが多い(*恩も売れますし、後続の意思決定プロセスも知れる)
最後の詰め「お金と承認」の状況把握と推進:Budget & Approval
必要性や今やる意義がOkとなっても、お金が合わなかったり、意思決定者が首を縦に振らない限り案件にはならない。
お金部分で予算の額や自分たちの見積もりを合わせることは、さすがにみんなわかっていると思う。
ただ重要なのが、誰が(どの役職)どの程度の決裁権限(執行できる予算)を持っているか?を把握することである。
クライアントもなるべく手続きや意思決定プロセスを多くは挟みたくない。そこで、実はこの金額なら自分で決裁できるけど、これ以上だとめんどくさい。。。という心理も働くので、会社によっては契約を細かく切って決裁レベルをあえて落としながら続けることも一つの手である。(会社によっては合計金額で決裁権限が変わることもあるし、担当者が変わるとそのようなごにょごにょ話ができないリスクもあるので注意)
行政はさらに面倒くさくて。。。。案件化には議会を通さないといけない。通常議会は開催時期が決まっているのでそこに間に合わないとNGということもある。
~コラム~
予算と承認の詰め自体は最後に行うが、そこの有無やどんなプロセスが必要かについては可能なかぎり早く知るべきである。そうしないと行政であればせっかく良い提言でも1年棒に振る可能性もある。
そのプロセスを把握することで、「先行管理」として本当に受注ができるのか?いつ受注として計上できるのはいつか?というのを確実に把握できる。
具体化をすることで相手の覚悟を問う:Concrete
ここまでの「B・A・N・T」で一定案件化に向けての芽が出てきたと思うが、実は残されたDifference・Concreteが非常に重要になる。
Differenceは次の記事で紹介するので、ここでは最後に具体性(Concrete)についてを説明する。
前述した承認プロセスを把握して、決裁を回してもらおうと思ったときに、予算は当然クリアしている全体で、1社であればその中身が問われる。
その際、ざっくりとした提案内容や「まあ、そりゃそうなんだけど・・・」という内容だったら、決裁者はニーズも予算も満たしているけど、他のサービスやコンサルにも話聞いてみた方がいいんじゃない?という判断をする。
例えば、それは、クライアントから出る表面上の言葉をそのまま受け取って、それをオウム返しの提案をすることである。
担当者も、あまりにも漠然とした内容だと「上席に決裁を諮るには早いな」と言って二の足を踏まれてしまう。
これを読むとそりゃそうだ!自分はそんな事ないぞってなる。
でも、コンサルの営業の現場ではこのようなことがたくさん起きている。
例えば、「自治体システムのクラウド化を進めてきており目標のシェア率25%を達成した。ただし、このシェア率をさらに伸ばすためにはこれまでの売り方では先細り感があるので売り先と売り方を変える必要がある。」って言われたらあなたならどう答えますか?
まず、ここで答えを出している時点で私は失敗する営業だなって思います。
そのまま答えを出すと、営業にヒアリングして困っていること拾って、行政にヒアリングして欲しいものを確認して提案書を作ったり、営業マニュアルを作りましょうっていう案件になると思う。
もちろんそれ自体を否定するわけでもないし、それが結果欲しいものかもしれない。
でも必要なのは、
「なんでそんなことを思ったのか?」「シェアを伸ばすことにこだわっているのはなんで?」「先細りとか売り上げに着目されているのは何かきっかけはありますか?」
と相手の背景や目的を深堀りすることが大事だと思う。
よくコンサル界隈では初期仮説で~とか、よく言う人いますが、相手の話を聞かないで適当にそれっぽいことを言うことが初期仮説ではありません!
初期仮説を構築するためにも、何に困っているのか?なぜ困っているのか?を質問しながら具体化していく・解像度を上げていくという作業が非常に大事。
そうすると、
実は、シェアは業界で一番取れているけど、小さい自治体しか行けてなくて競合は数は少ないけど売り上げが大きくて、大きい自治体への攻め方に悩んでいるかもしれない。
実は、シェアとか売り上げはそんな気にしていなくて重要な営業マンが引退して後続が育っていないことに焦りを感じているかもしれない。
むしろ仮説というのであれば、相手の発言の裏側には何があるんだろうと頭をぐるぐる回しながらここがツボじゃないか?ここが弱いんじゃないの?っていうのを念頭に質問を重ねていくことの方が重要だと考える。やはり答えはお客さんの中にあるので、そこを気づかせて・引き出せるのがプロだろう。
相手の思っている背景・目的をより具体的に解像度を上げて捉えることで、半歩進んでおり、残り半歩進めるためには、Input/Outputのつながりを具体的に見せて「もう出来るね」という状態を作り上げることが大事。
想定以上に長くなってしまったので、、、、
次回、具体化の続きと競合との差別化について解説していく。
参考書籍
最後に述べている、背景・目的の理解は、相手の表面ではなく、内面へと向かって問いかけていくのでこの質問力・質問の一流、二流、三流はぜひご一読願いたい。
どんな問いをすると相手は答えやすいのか?を考えるきっかけになればと思う。