[続き]具体化 プロジェクトはIn/Outの淀みないつながりで実現性を主張
前回投稿した時に営業を仕掛けて案件化するときには「B・A・N・T+DC」が重要であることを説明し、その中で、残りは「C」の途中と「D」なのでそれらを説明していく。
もう一度おさらいだが、「C」はConcrete(具体性)のことである。
B(予算)・A(承認)・N(必要性)・T(タイミング)がそろっても、クライアントの担当者や決裁者がOkを出さないと案件にならないため、提案にC(具体性)とD(競合との差別化)を付与していく必要がある。
前回は、相手の発言を鵜吞みにしないで背景・目的を深堀りをする「C:具体化」について解説をした。
今回は、背景・目的を具体化した後の「どうやるのか?」という部分の具体化について解説をしたい。
例えば、「A社のサービスが自治体というマーケットに刺さるのか確かめる」プロジェクトだとする。
以下の図が良い例と悪い例の比較である。
上段について、正直このレベルならおそらくクライアントでも思いつくし、大枠では実施している内容になってしまう。(コントラストを出すためにあえて酷くしているのはご了承いただきたい。)
むしろ、このレベルで、まあ大丈夫じゃない?って思っていたら非常に危険。
どうやって? どこの誰に聞きに行くの? とかツッコミを入れることができないと案件を取るのは難しい。
そこで、Input/Outputを具体的に書くこと、さらにそれぞれの作業がどのようにつながるのか?を具体に示す必要がある。下段がその進化バージョンである。
各作業の成果が明確になり、つながりも見えるので、おそらく安心して任せられるだろう。もちろん、どんなアウトプットを想定してどんなヒアリング項目にするのか?とかまだまだ具体化できる部分はあるが、このように1つ1つ丁寧に具体化を繰り返すことで「これならできるね!」「自分たちだけだと(質/量として)できないね」と納得させられると考える。
これが具体化であり、案件化するためには必須の項目である。
最後のピース「競合との差別化」は自己満足に陥るな、大事なことを誘導せよ
最後残されたピースは「Difference」である。
これは、競合との差別化を示しているが、本質的には「なぜ我々じゃないといけないのか?」という勝ち筋のことを示す。
すごく簡単に言うと「強み」である。
これを私のチームでは「win テーマ」と呼んでいて、「なに(どんな武器)で相手に勝つのか?」というのを提案時には徹底的に問うのである。
ただ、この競合との差別化やwinテーマは勘違いしがちな内容である。
これを図式化すると、以下のようになり、自分・相手・顧客というステークホルダーの掛け合わせの中にwinテーマが存在しているのである。
対クライアント目線(なぜ必要か? それがあるとどうなる?)への対応
よく目にするのが、以下のような提案・強みを押し出した提案書である。
- 我々はグループ会社のシナジーを活かして最初から最後まで対応可能です
- グローバルの法人で連携して価値を創出します
お客さんの気持ちになってみると、、、「すごいですね!・・・で?」ってなりませんか?
もちろん、これを求めていたら良いですし、これで勝率が上がることもあるかもしれませんが、これが決定要因になることはおそらくないかなと思います。
では、どのようにすればwinテーマになるか?
それは、以下の通り。
①その業務に必要なものや課題は何かをはっきりさせる
②その課題や必要なものに対してどんな対策を実施するかを分かりやすく提示する
③その対策はなぜ自社ができるのかを説明する(*可能ならそれがonly oneであるとGood)
①その業務に必要なものや課題は何かをはっきりさせる
こちらも前回の具体化と同じではあるが、背景や目的を踏まえた上で今回の案件を考えるとどのような点が課題なのか?どのような点に気を付けないといけないのかをはっきりさせます。
例えば、同じ新規事業立案関係でも初年度で色々試していこうっていうフェーズの案件だとまずはアイディアをどんどん出していくことが重要になるし、それが3年目とかのフェーズだと確実に形にすることが求められる。
このように、必要なものはクライアントの立ち位置や案件の状況を踏まえて、今何が重要で課題は何か?をはっきりさせてクライアントと同じ方向を向くようにする必要がある。
実はここが重要で、クライアントも何が重要かを意識していないことが大半であるし、これから説明する③の強みから逆算して、こういうところが重要です!ということ戦略的に誘導することも時としては大事です。(もちろんクライアントの要望や思いを捻じ曲げてまで誘導すると、おそらく案件が取れないでしょうし、取れても炎上します。)
もう一つポイントとしては、こんなことが課題ですよね?ということだけじゃなく、その課題を解決するためには〇〇みたいなことが必要・成功要因ですよね?ということまで握ると、②の合意がしやすくなります。
②その課題や必要なものに対してどんな対策を実施するかを分かりやすく提示する
①で課題や成功要因が合意出来たら、次は打ち手・対策の話です。どんなことをやるのか?を前述のように具体に示すことが重要。
例えば、前述のケースのように「A社のサービスが自治体というマーケットに刺さるのか確かめる」というお題だった場合、課題は「自治体の規模が様々かつ部署もいろいろ多いのでニーズってつかみにくいですよね?」と合意。
そのうえで、「自治体のマーケット解像度を上げること」が成功要因なんじゃないですかね?と誘導して、①を抑える。
そうすると、次に②では、「自治体を人口規模でセグメント分けます」とか「サービスや機能が刺さる部署を特定してヒアリングしよう」という形で具体的にどのように課題を解決するのか? 具体的に成功要因を充足する打ち手は何か?という問いに答えていきます。ここを合意すれば正直提案書の骨格は出来上がったも同然。
③その対策はなぜ自社ができるのかを説明する(*可能ならそれがonly oneであるとGood)
最後に、ここまで出来たらなんでそれを自分たちができるのか?を示していきます。
例えば、全国に支店があります!だけだと「・・・はい、それで?」となりますが、
「全国に支店があり、規模の違う自治体とのパスが既にあるのでヒアリングなど効果的にできます」
「全国の観光課を束ねる組織を再委託先に入れるので個別に撃破しなくても一気にヒアリングとかアンケートができます」
「全国の自治体に同様のヒアリングをしたことがあるのでどのようにアプローチするとよいヒアリングできるか知っています」
というように、「リレーション」「体制・スキル」「実績」面で裏付けられていることを証明して、打ち手や対策を実行するときになぜ自分たちであればできるのかを説明します。
この①~③の流れがなく、いきなり「全国に支店がある」といっても強みにはならないので、そこは相手(クライアント)というステークホルダーを意識してwinテーマを作っていくことが一歩目になります。
対競合目線(本当に自分たちだけしかできないといえるか?)への対応
次に、競合に目を向けてみてください。
全国に支店があって行政抑えてます。とかって実は競合他社もできるんじゃないですかね?
実は競合の方がもっとすごい実績持ってたりしませんかね?
ここから目を背けて自分すごいですアピールの提案書にすると面白いくらいあっさり負けます。
大事な二歩目は、クライアントと合意した課題や対策を裏付ける「リレーション」「体制・スキル」「実績」が競合よりも優れているか?もっと言うと優れているかどうかは感覚なので、自分たちしかできないと言えるか?が重要です。
例えば、さっきのケースでいうと、自治体を束ねる団体が1つなら体制としてそこを抑えれば勝ちになる。実績は関連する実績で日本で一番だと(証明できる)いえると評価がよくなる。
もちろん、受注要因(発注の決めて)は「価格が安い」ことが圧倒的に強いのだが、実はそれに続き「対応実績の有無」「専門性の高さ」「組織や体制の強さ」が挙げられているので、その辺りを意識して提案をするとよい。
そうするとお気づきいただけると思うが、提案は、提案書という紙を頑張って書くだけでは勝てないです。
もちろん、紙すらも書けないのはダメですが、他社が仕掛けてくる提案を予想してどこで差別化を図って強みを押し出せるか?を考え、行動しないと中身のある骨太な提案書にはならないです。
勝てるようになるにはどうすればよいか?
・・・ってことは実績もない案件は勝てないですか?ってなりますよね?
そうなんです、、、道のりは厳しいです。
なので、最初は「価格」でなんとか頑張って入って実績を取って、そこから広げていくなど「武器づくり」を戦略的にやっていかないと毎年毎年自転車操業的に頑張って提案して、勝ち負けを運に任せてってなってしまうのでしっかりとどの領域で実績を上げていくのか?どの人たちと仲良くなって体制を強化していくのか?を考えて回す必要があります。
加えて、クライアントも「人間」であり「企業人・行政人」であることを意識すると色々見えてきます。
例えば、重要な取引先はどこにでもあるわけで、そこを取り込み断れない状況をつくるとか、バーターモデルで会社として発注する代わりに、案件をもらうなどいろんな手段を使って口座を開け、開けた口座を守り・広げることが重要。
また、これまで合理的に勝つ方法を説明しましたが、当然クライアントも出世したいし、場合によっては楽したいし、、、
ここも汲み取って、合理的かつ感情的に選ばれる人・企業になる「行動・意識」をすることが勝てるようになるアプローチかなと思います。
参考書籍
私の提唱するwinテーマとは少し観点が違いますが、どのような観点で提案やプレゼンを行うかという根幹が非常に整っている1冊です。